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白石莉菜は、景が世話になっている養護施設の園長の娘で小さい頃から一緒な分、身内ともいえる存在だ。
「それじゃあ、出席をとります!」
元気な声で、現実に引き戻された景は、その発信源を見た。
肩まで伸びたセミロングの黒髪に、眼鏡をかけ、ジャージ姿の女性が黒板の前に立っている。担任の長谷川郁美だ。
その溌剌で男女分け隔てなく接する性格と美貌で、学年関係なく人気がある。
クラスで浮いている、というか一匹オオカミの景にも積極的に話しかけてくる、どこまでも“先生”な先生である。景としては、若干鬱陶しい。
そんなこんなで、真面目にノートを取りながら、全ての授業をこなした。時刻はすでに放課後。
「はーい、じゃ準備始めるよ! 男子は看板作り。女子は衣装作りね」
そう言って、仕切りだしたのは、クラス委員長の石崎春香。三つ編み眼鏡のザ委員長を地でいく女だ。莉菜の友達でもある。親しい友達以外は、皆彼女のことを委員長と呼んでいる。
そんな委員長の号令で、やる気のある男子たちが看板作りを始めた。景はというと、未だに席に座ってボーッとしている。
「そっち、もうちょい引っ張って」
「はいよ」
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