第1話 異世界召喚はいつも突然だ

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第1話 異世界召喚はいつも突然だ

月曜日、というのは憂鬱な日だ。週明けで寝不足(ゲームのせい)の上にそれから五日間は規則正しい生活が待っている。それに加え、今日からは文化祭という意味の分からない行事の準備が始まる。 生徒間の交友やクラスの団結を深めるなどと謳っているが、ぼっちでいたい人種にとっては、全くいい迷惑、お節介である。 「あー、マジで憂鬱だ」 終夜 景(よすがら けい)は、大きく溜め息を吐きだした。吸った倍以上の空気を吐き出して、息と一緒に憂鬱も出て行ってくれないかと思ったが、やはり気持ちは出て行ってくれないらしい。 文化祭が終わるまでは、この陰鬱な気持ちと同居しないといけないと考えると、軽く目眩を覚える。 いっそのこと、学校に隕石でも降ってこいよとも思うが、そこは現実。ゲームや小説と違って、早々ご都合なことは起こりはしない。 大体、この学校はおかしい。 どうして、入学して一ヶ月後に文化祭の準備が始まるのか。二年三年はまだいい。が、入学したての人間関係もそんなにできていない一年に、どんな団結を期待しているんだ。 まぁ、景の場合は学年がどうだろうと、文化祭という行事自体に抱く感情は変わらないが。 景が文化祭についてのあれこれを考えている間に、学校へと到着した。自分のクラスの自分の席へと座ると、おもむろに支度を開始した。 クラスにはすでにほとんどの生徒が登校してきているが、誰も景には声をかけない。 景は、とても淡白な人間だ。自分が必要だと思った人間とは会話をするが、無意味と判断した相手とは一切会話をしない。 しかも、その必要だと判断する基準は、自分にとって得になるかならないかである。 必然的に、クラスで浮いていくのは当たり前で、しかし景自体も浮いていることに何の関心もない。 景が損得なしに話す相手といったら、幼馴染の莉菜だけだ。
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