恋のはじまり?

2/11
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「えーなになに? さわっちゃんたらオレの心配してくれてんのー?? さっすがオレの恋女房ー♪」 「あーはいはい。いつでも三行半叩きつけてやるから気をつけて帰れよ、この我侭感傷エース」 「ひでぇー。せめて繊細と言ってくれー」  両手の指を絡めてお願いをするようなポーズを作って『いやんいやん』と身体をねじってふざければ、さわっちゃんは呆れたように苦笑した。いかにも球児といったオレの坊主頭をガシガシと撫でながら。 あえて他のやつらが流してくれたことに触れてくるあたり、さすがはキャプテン兼オレの女房役である。それにしても、そんなにオレ、いかにも死にそうな沈痛な顔でもしてました? いくらなんでも死にませんよ、甲子園まであと一勝だったくらいで。 「もしかしたらここに立ってたのはオレ達だったかも」なんてちょーっと妄想したら、なんだか虚しくなっちゃっただけですよ。それともさわっちゃん自身が感傷的になってたからかな? てか我侭って、捕手でありキャプテンであるさわっちゃんのいうことをよくきく躾のいいピッチャーっだったでしょ、オレ? 多少、いやそこそこ首振ったり~投げたい投げたい投げたいって目で主張してみたり~今日は新しい球種練習したいって困らせたり~変な間の取り方すんな俺までテンポくずされるわって怒られたり~ロジンがちょうどいい感じにならないからってイライラすんなって怒られたり~「あと十球受けて」をリピートしまくったり~冷たいからアイシング嫌いって逃げ回ったり~日によって球速ちょーっと変わっちゃったり~一緒に監督に怒られてもらったり~よく教科書借りにいったり~スパイク選び付き合ってもらったり~チャリの後ろ乗っけてもらったり~テストのヤマはってもらったり~単語帳作ってもらったり~モーニングコールしてもらったり~……。あー、うん、さわっちゃん、いつもありがとう! オレ、さわっちゃんなしじゃ高校生活、生き抜いて来れなかったよ! 「じゃーな」 「おう、またな」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!