公家Eさんの場合

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公家Eさんの場合

「さて、マジでどうしたもんか。こんなもの聞いたことないぞ……。  でも他の奴らは意気揚々と探しに行きやがったからな。今更後には引けない。俺もなんとか探し出さねばなるまい!  でもなぁ、正直これ無理だろ……。  そもそも見た事が一度もない生き物の、しかもその首にかかった玉取ってこいって言われてもさ、まずどうやって探せばいいんだよ。意味わかんねぇ。嫌がらせとしか思えない。  他の奴らも、実は探す気なんてほとほとなくて、偽物作ったり適当なものをそれっぽく見せたりするつもりなんじゃないだろうな? いや、そんな気がしてきた、マジで。  俺もそうしちゃおうかなぁ……でもそれって、あの娘のお願いを蔑ろにしたってことになっちゃうからな。できればぎりぎりまで探したい。  はぁ、仕方ない、海で船でも出してもらうか……。  ん、なんだあの建物? 四角くて馬小屋みたいなのに、やたら白くて綺麗に整えられている……。  しかも面妖なことに全面ガラス張りで中が良く見えるようになっているし、中には色んな品物があるようだな。不思議な建物だ。  もしかして、ここになら俺の探している物があるのかもしれない! ちょっと怖いけど、入って見ようかな……」  ピンポーン。グイーン。 「いらっしゃいませー」 「う、うわっ。いきなり透明な扉が開いた! しかも人の手を借りずに自動で!? なんだこれは、妖怪の仕業か!?」 「お、お客様、どうかされましたか?」 「え、ええい近寄るな! お主も青い変な服を着ていて、もしかして妖怪の親玉か!? 寄るな! 寄らば斬るぞ!!」 「ひ、ひぃぃ、すいませんでしたー!」  グイーン。 「ふ、ふぅ。先程の扉が閉まったぞ。ああ、本当に心臓に悪い。こんな奇妙なところに長居は無用だ。さっさと先を急ごう。  こんなところで時間を食ってるわけにはいかないのだ。さっさと探し物を探しに戻ろう。そうだ、他の奴に先を越される可能性があるからな。急がねばなるまい。  それにしても困った……。竜の首の玉って一体どこにあるんだろう。他の奴が頼まれてた火鼠の皮衣や燕の生んだ子安貝とかのほうがまだ見つけやすそうなのに……。よりにもよって竜って、どこ探せばいいんだか。  でも俺は絶対諦めないぞ! かぐや姫と結婚するのは俺だ! 必ず見つけ出してやるからな!!」
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