42 踏みつけられない

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「庄司! いいから、帰れ!」  そこには俺と要が写っていた。昨日の営業の部屋、要はこの男の無理難題に必死に答えて、ヘトヘトで、俺はそんな要が外回りから返ってくるのを待っていた。写真の中の要は猫舌のせいでいっこうに飲めないミルク砂糖、どっちもたっぷり入ったコーヒー牛乳を持っていて、小さな頭を俺へと預けて目を瞑っている。  俺はそんなこの人の頭のてっぺんに愛しそうに口づけしていた。 「社内で熱愛、大昔のお前からは想像もできないなぁ」  どっからどう見ても、「恋人同士」だった。 「まさか、お前がこんな大胆なことをするタイプだとは思わなかったよ。この後、どうしたんだ? 写真を撮ってくれた奴はこの後ビビってしまって、続きを知らないんだ。残念。もっと衝撃的な写真のほうがゆするネタには使えるのに」  はぁ、とわざとらしい溜め息を男がついた瞬間、背中の神経が焼け爛れた気がした。 「男同士、社内でいかがわしい行為に耽る……なんて、最高に楽しいだろ?」 「要、なんなんだよ、これ」 「おや、上司に向かって呼び捨てかぁ。まぁ、そうだよな。恋人同士だもんな」 「要!」  俯いて肩を震わせ、何かを堪えていた要が俺の声に反応して、男のそばを離れようとした。 「おい、誰が動いていいって言った?」  でも、男は要の足元に写真を、今度は同じ写真を縮小したものを数十枚ばら撒いた。要は自分の足元に散らばる全く同じ写真たちに声も出せず、動くこともできない。全神経が焼き切れそうなくらいムカつく男の言われるままに要が止まった。 「こいつと俺は同級生でね。親友だったんだ。なんでも俺に話してくれてた。こいつのことで知らないことなんてなかったのに」  おい、要、そんな写真踏みつけろよ。 「なのに! 俺に隠し事をしてたんだ! 最低だろ? 親友だと思ってたのに、秘密にしてた! ショックだったよ。ものすごくショックだったんだ。なんでも知ってたのに、まさかそんなことありえない」  脅された? 部下で、同性で、年下の俺と職場でイチャついてるところを写真に撮られて、脅されて、動けなくなった。この写真をばら撒かれたくなかったら、自分の言う事を聞けと言われた?
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