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「でも、それで人嫌いになってくれたから、まぁ、結果的にはよかった……んだけど! まさか、大人になった要がこんな変わってしまってるなんて! 最低だよ。最悪だ!」
そんなの全部踏みつけろ。
「要は綺麗なままでいなくちゃいけないのに。真っ白で、どこも穢れてない。誰も触れちゃならない存在なのに! 正月に駅で見かけたんだよ。真っ黒に汚れた要を。誰とも話しちゃいけない存在なのに、俺を見つけて声をかけてきたんだ」
そんな気持ちの悪い、頭だけじゃなく足の先まで朽ちたクソ野郎の言うことなんて聞くな。早く、こっちへ――
「でも、大丈夫、俺が浄化してあげるから」
「……め」
「要も私も、君とは違うレベルの人間なんだ。人の上に立つべき存在。でも、その中でも要は特別一番高いところにいた。もちろん孤高の存在なんだから、人と話すのだってしてはならない」
「……なめっ」
「だから、要は」
「要っ!」
数歩近づいたら、要が悲しい顔をした。目に涙を溜めて、首を横に振る。俺がこれ以上近づいたら、その心臓が止まるんじゃないかって思うほど、胸のところでジャケットを強く握り締めている。
「要とは別れるんだ」
何言ってんだ、この。
「別れてくれたら、この写真はバラ撒かずにいてあげよう」
ふざけてんじゃねぇぞ。
「おい、クソったれ、黙れよ。要! そんな脅し無視しろよ! 要! 写真なんてどうだっていい!」
「そういう反抗的な態度にでるだろうなって思ったよ。でも、君は何か勘違いしている。これは君たちのためなんだよ?」
「あ?」
ニヤリと笑ったこの男をぶん殴ってやろうと思った。
「要はゲイだけれど、君はそうじゃないだろう?」
「は?」
「自覚はなかっただろうが、要はゲイだよ。思春期を一緒に過ごしてきたんだ。女性に興味がないのはわかってた。でも、君は違う。要が相手だから落ちたか? ははっ! そりゃそうだよ。要なんだから。でも」
今だけだ。そう言って笑いやがった。
「一生、同性である要を愛してる? なぁ、君はちゃんと考えたかい? 男同士で恋愛するってことを」
「はぁ?」
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