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「……」
「……」
そして見つけてしまった、オフィスの一角で、どエロい喘ぎで悦がりまくりの動画をパソコン、いや、スマホでこっそり視聴しようとして、音声垂れ流しにして慌てて消した、どスケベ。
「……」
そのどスケベな「彼」は、うちの会社の「要」と言われている、バッキバキに仕事をこなして、最年少で元営業課長を窓際どころか、このフロアから追いやった、現営業課長、その人だった。
「あ、えーっと」
「……」
気まずさハンパねぇ。エロ動画見てるところを部下に見られてとか、向こうも最悪だろうけど、こっちだって最悪だ。
とりあえず、なかったことにするのが一番。大人のエチケットっつうやつ。外ヅラは温厚で爽やかな好青年で通らせてる俺はそこをサラッとスルッと。
「外回りから帰ってきましたぁ。あ、でも、ちょっと外回りにいってきます」
ニコッと笑って、そして、そっと逃げ出した。デスクから立ち上がり、何も知りません、聞いてません、見て……はマジでしていません、って顔をして、ふいぃっと部屋の外へと逃亡を図った。
マジかよ。あれが、課長? あの、鬼の子すらちびるだろう、あの口うるさかった元営業課長に何一つ反論させずに隅っこへと弾き飛ばした、キレッキレにキレのある、スパルタ課長、花織要(はなおりかなめ)? 人違いなんじゃねぇ?
いつもはつり上がったまま固定されてる、っていうか、たぶんそれが通常仕様なんだろってほど、一ミリだって下がることのない眉毛を八の字にして、顔、真っ赤にして、口開けて、眼鏡越しでも痛いほど突き刺さる鋭い瞳をまん丸く見開いていた。あれが、あの、花織要?
名前はすげぇ綺麗でさ、ちょっと女っぽい名前だし、この部署に就任してくるらしい新課長に営業全員が色めき立ったのを覚えてる。性別までは知らされてなかった俺たちは、新課長が三十歳という年齢、すげぇ仕事ができるらしく、社長がどこからか引き抜いたやり手、「花織要」にぶっちゃけよからぬ妄想を抱いていた。
元気印の男子高校生じゃあるまいしって思うが、名前だけで想像したのは、タイトスカートがエロい女上司。
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