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その日から、もっちゃんは私にとやかく言うことが少なくなった。
こっそりイートインスペースで寝てみても、何も言わない。他の従業員の手前おおっぴらではないが、たまに話しかけてくれるくらいだ。
それは、ストーカー被害に遭った私に同情してのことか。……それとも、私の体の具合を重んじてのことか。
家出をしてから、私の体調は徐々に悪くなっていった。
まともに睡眠を取っていないのだから、不調が現れるのは当然だった。特に頭痛がひどく、痛みに立っていられない時すらあった。
自動ドアの電子音……あれが体の波長に合わないのか、余計に頭に響く。だからと言って、コンビニを出たところで私には帰る場所なんてどこにも無かった。
「……大丈夫か?」
もっちゃんが小声で声を掛けてくれる。無表情だけれど、今となってはなかなか気配りのある男だ。
そんな態度が嬉しくて、然程ではない時も弱々しい演技をしてみせてしまうのは、甘えだろうか。
「ううん、微妙……」
「うちに来るか?」
「え?」
それは、予想だにしない提案だった。
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