待ち人は夜明けとともに

5/11
前へ
/11ページ
次へ
   *  その日から、もっちゃんは私にとやかく言うことが少なくなった。  こっそりイートインスペースで寝てみても、何も言わない。他の従業員の手前おおっぴらではないが、たまに話しかけてくれるくらいだ。  それは、ストーカー被害に遭った私に同情してのことか。……それとも、私の体の具合を重んじてのことか。  家出をしてから、私の体調は徐々に悪くなっていった。  まともに睡眠を取っていないのだから、不調が現れるのは当然だった。特に頭痛がひどく、痛みに立っていられない時すらあった。  自動ドアの電子音……あれが体の波長に合わないのか、余計に頭に響く。だからと言って、コンビニを出たところで私には帰る場所なんてどこにも無かった。 「……大丈夫か?」  もっちゃんが小声で声を掛けてくれる。無表情だけれど、今となってはなかなか気配りのある男だ。  そんな態度が嬉しくて、然程ではない時も弱々しい演技をしてみせてしまうのは、甘えだろうか。 「ううん、微妙……」 「うちに来るか?」 「え?」  それは、予想だにしない提案だった。  
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加