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思わず返答に詰まる。私はもっちゃんの顔を見返した。
……あれだけ拒否していたのに。どういう風の吹きまわしだろう。
ずっと寝床を求めていたのに、いざとなると猜疑心が頭をよぎった。それは今までのもっちゃんが、硬派……なのか分からないが、女子高生の誘いに乗らないような堅物男だったからこそなのだか。
「うち、すぐそこだから。横になった方がいいだろ」
妙に、平然と言う。……これはきっと、何かの罠だ。
しかしあれこれと考えたのは一瞬のことで、私は気付けば二つ返事で答えていた。
「……行く」
所詮、いつもの援交と同じである。
もっちゃんが上がる時間になるまで、私は店舗の外で、浮かれながら待っていた。
ようやく布団でぐっすりと寝られる。これで体調もよくなるかもしれない。なんなら、料理洗濯もサービスしてやろう。
そんなことを考えているうちに、制服を着替えたもっちゃんが裏口から出てきた。
全く個性の無い無地の白Tシャツに、そこらで安く売り叩いていそうなストレートのジーンズ。だが、その姿でさえ私には輝いて見える。
私は気持ちが高揚したまま、腕くらい組んでやろうともっちゃんに近付いて、しかしその手を止めた。
……もっちゃんのその表情が、どこと無く険しく見えたのだ。
もっちゃんはコンビニを出ると、言葉も無く真っ直ぐに大通りを歩き出した。
何かを考えているような表情。顔を覗き込んでも、目も合わせない。
「……ねえ、どこに住んでるの? 家は広い? 今夜のご飯、何?」
問いかけてみても、返事は無い。
もっちゃんは、モテるような容姿には見えない。女子高生と一つ屋根の下で、今更に緊張しているのだろうか。
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