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弐
「おい。あそこに童が居るぞ!」
そのとき、びっくりするほど大きな声がそう言って、ぴたりと歌が止んだ。
下を覗き込むと、七人の男の人が私を見上げていた。
「あ、勝手に聞いてしまってごめんなさいっ」
はっとして謝ると、下の男の人は再び声を上げた。
「あぁっ? よう聞こえん! おりてこい!」
「は、はいっ!」
慌てて頷くと、その人達に内の一人が、ひゅんっと風を纏い、隼のように上がってきた。
「見かけぬ顔だな」
その人の目もまた隼のように鋭く、私は一瞬怖いと思ってしまったけれど、すぐにその奥の清らかさに気づいた。すると、その人は突然目を細めて笑った。笑うと、とても愛嬌のある顔になって、全然違う人に見えた。
「お主、酒は飲めるか?」
「お正月に飲むことはありますが、あんまり好きじゃ…」
「それは下界の酒だろう?
天界の酒は美味だぞ。俺は梨の酒がとりわけ好きだが、その天まで昇る芳しい香りといったら、飛翔する竜すらも骨抜きになって落ちてくる程だ」
私はそれを聞きながら、白竜が骨抜きになったところを想像して、思わず吹き出してしまった。
「何だ」
「あの、その酒、白竜にも効きますか?」
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