1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

 目を覚ますと、私は寝台の上に居た。  いつものように白竜に思いを馳せたが、言葉を交わすことは出来なかった。 「緑葭、早く起きなさい!」  朝ご飯の匂いと共に母さんの声が部屋に飛び込んできて、私は慌てて返事をした。  床に足をおろすと、飛び上がりたくなる程ひやりとしていた。  窓から空を臨んでもそこに月はなく、自分の息を嗅いでみても、再びあの酒の芳しさを思い出すことは出来なかった。 (こんどはいつ会えるんだろう……)  遠い銀と紫の世界の人々。  爽やかな月夜の下、天に祝福された竹林の宴。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!