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ザァァァァ… ザァァァァ…
雨の日は、ただ雨が降っているというだけで何もかもが変わる。
体が重い。何をする気も起きない。
やり場の無い苛立ちを紛らわす為に舌打ちすると、ほぼ同時に、何かに背後から服を引っ張られた。
「わぁぁ、スゴイねぇ。真っ黒だ」
子供の声。
不覚だったにせよ、ひどく驚かされたことに腹が立ち、「最悪」の形容が相応しい気分を胸に、立ち止まる。
「…離せ」
「ねぇ、どうして? どうして真っ黒なの?」
相手が大人ならすぐにでも怒鳴りかかるところだが、相手が子供だとそういうわけにもいかず、乱暴に手をはらう。
それでも、相手は怯えて逃げ出すどころか、懲りもせず俺の後を追いかけながら、ワケの分からない質問を繰り返す。
「待ってよ、どうしてなの?」
「うるさい! ついて来るな!」
本当にツイてない。ただでさえ雨のせいで気分が悪いってのに、何で変なガキにまで声かけられてんだ?
これが好みの女ならまだしも、
「ねえってば!」
ガキ。
「だから、ついて来るなって…!」
苛立ちが頂点に達した俺は、怒鳴りながら振り返った。
そして、そのまま動きを止めた。
「お兄さんは、どうして真っ黒なの?」
…息を呑む。
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