【1】 黒と白

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ザァァァァ… ザァァァァ…  雨の日は、ただ雨が降っているというだけで何もかもが変わる。  体が重い。何をする気も起きない。   やり場の無い苛立ちを紛らわす為に舌打ちすると、ほぼ同時に、何かに背後から服を引っ張られた。 「わぁぁ、スゴイねぇ。真っ黒だ」  子供の声。  不覚だったにせよ、ひどく驚かされたことに腹が立ち、「最悪」の形容が相応しい気分を胸に、立ち止まる。 「…離せ」 「ねぇ、どうして? どうして真っ黒なの?」  相手が大人ならすぐにでも怒鳴りかかるところだが、相手が子供だとそういうわけにもいかず、乱暴に手をはらう。  それでも、相手は怯えて逃げ出すどころか、懲りもせず俺の後を追いかけながら、ワケの分からない質問を繰り返す。 「待ってよ、どうしてなの?」 「うるさい! ついて来るな!」  本当にツイてない。ただでさえ雨のせいで気分が悪いってのに、何で変なガキにまで声かけられてんだ?  これが好みの女ならまだしも、 「ねえってば!」  ガキ。 「だから、ついて来るなって…!」  苛立ちが頂点に達した俺は、怒鳴りながら振り返った。  そして、そのまま動きを止めた。 「お兄さんは、どうして真っ黒なの?」  …息を呑む。     
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