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社会的な仮面を身につければ怖いモノ無しだが、それが一度剥がれると、どうしようもなく弱くなる。そんな女性は、珍しくない。
「…えっと、だからママ、お客さんが来てるから、下に行っててくれる? 後で話を聞きに行くから。ね?」
「……分かったわ。でも、お薬の時間には来ますからね。ヒカルくん」
そう言うと、その女は、不機嫌そうに俺に会釈して、渋々と部屋を出ていった。
「…何なんだ、あれ。ちょっと過保護過ぎると思うけど」
「仕方ないよ。偽善なんだからさ」
母親が出て行ったドアの方を向きながら椅子に座り直した俺は、一瞬自分の耳を疑った。
今の……ヒカルが言ったのか?
「あ、驚いた?」
ヒカルは、まじまじとした俺の視線に気がついたように振り向くと、口の端を上げながら、楽しそうな声でそう言った。
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