【4】 カーテンの閉まった部屋で

3/3
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
 社会的な仮面を身につければ怖いモノ無しだが、それが一度剥がれると、どうしようもなく弱くなる。そんな女性は、珍しくない。 「…えっと、だからママ、お客さんが来てるから、下に行っててくれる? 後で話を聞きに行くから。ね?」 「……分かったわ。でも、お薬の時間には来ますからね。ヒカルくん」  そう言うと、その女は、不機嫌そうに俺に会釈して、渋々と部屋を出ていった。 「…何なんだ、あれ。ちょっと過保護過ぎると思うけど」 「仕方ないよ。偽善なんだからさ」  母親が出て行ったドアの方を向きながら椅子に座り直した俺は、一瞬自分の耳を疑った。  今の……ヒカルが言ったのか? 「あ、驚いた?」  ヒカルは、まじまじとした俺の視線に気がついたように振り向くと、口の端を上げながら、楽しそうな声でそう言った。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!