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【5】 ヒカリ
「いや…ヒカルって、そういう性格だったんだな。意外だけど」
「ふーん。やっぱりそう思うんだね。
まぁ、そうだよね。体は同じなんだし」
そう言うと、ヒカルは俺の方へと顔を近づけてきた。
「俺はね、ヒカリっていうの。ヒカルじゃない。世間でいう、二重人格ってやつ?」
「はっ?
どうしたんだよヒカル」
「ヒカルはもう居ないよ。どっか行ってる。『部屋』で寝てるかもね。
この体も、今は全部俺のものだ」
俺は、無意識の内に眉根を寄せて、目を細めていた。
「…どういうことだ?」
「まだ理解出来てないようだね。
あっ、そうだ。こうすれば分かる?」
そう言って俺の方へ近づいてきたかと思うと、その「ヒカリ」と名乗るヒカルの体を持った少年は、俺の顎を掴んで、自分の方へとひきよせた。
「何するんだよっ!」
「何って、こうする」
「……!」
唇に感じた感触を名前にするまで、少しの時間を要した。
「んんん!!」
これが「キス」だと気づいて必死に抵抗するも、無理な姿勢のせいで、まったく歯が立たない。
「…悔しいの?
だろうね。女に慣れている男が、受け身の立場に立たされること程屈辱的なことは無いものね」
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