倉知編 「恋愛感情」

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 おかしそうに言って、電話が切れた。  息をつく。ベンチの背もたれに背中を預け、目を閉じる。  なんだか、すごいことになった。  電話番号を教えてくれただけでも奇跡なのに、会って話せるなんて。  夜空を見上げる。月と星が、綺麗だ。そんなふうに感じるのは初めてで新鮮だった。  確実に、自分の中で何かが変わろうとしている。  本当に、俺は恋をしているのかもしれない。  家に帰って夕飯を済ませ、風呂に入っている間もスマホを手放さなかった。だって、いつ電話がくるかわからない。  時計を見た。九時少し前だ。こんな時間まで仕事なのだろうか。大人は大変だ。  電話がくるまで筋トレでもしていよう。  腕立て五十回、腹筋五十回、背筋五十回を三セット。途中で電話がかかってきた。  画面には、登録したばかりの「加賀さん」の名前が出ている。  深呼吸をして呼吸を整え、電話に出た。 「もしもし」 『こんばんは。もしかして寝てた?』 「いえ、筋トレしてました」  加賀さんが「筋トレ」と復唱して、また笑い声を上げる。よく笑う人だ。 『裏切らねえなあ。面白いわ、お前』
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