倉知編 「恋愛感情」

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 筋トレの何が面白いのだろう。 「あの、加賀さん」 『ん?』  どうしてこんなに打ち解けて話してくれるのか、わからない。ストーカーみたいで気持ち悪くないのか、それを訊いてみたい。でも、加賀さんの態度が変わるのが怖い。  結局「お仕事お疲れ様です」と言うしかなかった。  加賀さんはまた大笑いをして、二回咳き込んだ。 『あー、腹痛い』 「俺別に面白いこと何も言ってませんよね」  笑ってくれるならなんでもいいかとも思うが、少し不安になる。俺は変なのだろうか。 『うん、面白いこと一切言ってない。それが面白い』 「はあ」 『で、明日。何食いたい? お兄さんがおごってあげよう』 「いえ、おごらなきゃいけないのは俺のほうです」 『なんでだよ』  また吹き出して、笑う。確かに今の返しは変だったかもしれない。でも俺は、会えるだけで嬉しい。そんなことは考えもつかないだろう。  そう、多分、この人は気づいていない。俺が好意を持っていることを。  気づいていたら、携帯の番号は教えない。相手にしてくれるわけがない。可愛い女子高生ならともかく、汗臭い男子高校生だ。しかも無駄にでかい。
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