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「いい子だな」
「えっ」
「いや、なんかお前、ちゃんとしてるよな」
「そうですか?」
照れ臭そうにコップを持ち上げ、照れ隠しか水をがぶ飲みしている。
「今時の若者らしくないっつーか」
「加賀さんだって若者じゃないですか」
「いや、おっさんだよ」
「いくつですか?」
「いくつだっけ?」
「訊かれても」
若い頃は一年の区切りがあり、自分が何歳だと自覚していたが、社会人になり、一人暮らしをしていると特に年齢には無関心になる。俺が何歳だろうが誰も気にしない。
「二十……八、いやごめん、さば読んだ。今年で二十七だわ」
「二十七歳」
倉知は俺の名刺を眺めて、なぜか感慨深げだった。
高校生にとって二十七歳は確実におっさんだ。年の差に怯んだか、と思ったが、倉知の口元は笑っていた。いそいそと、大切そうに名刺を財布にしまっている。
「倉知君は何年生?」
「高校二年です」
「育ったなあ。何センチあるの?」
「百八十七です」
「でかっ」
「小学校からバスケしてるんで」
「バスケなー」
バスケやバレーをする人間の背が高い傾向にあるのは、大きいからそれをするのか、それをしているから大きいのか、どっちだろうと常々疑問を抱いている。
「加賀さんは学生の頃、部活何してました?」
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