加賀編 「七世」

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 真剣な顔つきになる倉知が面白い。 「陸上って結構種目多いですよ」 「うん、知ってる。俺の唇は安くないのよ」 「せめて三択か四択にしてください。いや、二択がいいです」 「馬鹿、甘ったれんな」  倉知は眉間にシワを寄せて俺を見た。本気で透視を試みているようだ。こんなに必死になるとは意外だ。照れて遠慮するかと思ったのに。予想外に男らしい。  お好み焼きが焼き上がっていく間、倉知は俺から目を離さなかった。 「わかりました」 「それでは答えをどうぞ」 「長距離、ですね?」  自信満々な顔だ。俺は肩をすくめて、首を横に振った。倉知の顔から生気が抜ける。可哀想だが笑えてくる。 「正解はハイジャンです」  わかりやすく消沈する倉知の皿に、焼き上がったお好み焼きを載せてやった。 「お前な、そんながっかりすんなよ」  付き合ってんだから、キスくらいいくらでもしてやる。という言葉を飲み込んだ。  しばらくの間、がっかりする倉知を堪能しよう。
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