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やってしまった。
見知らぬ他人の降りる駅を把握しているなんて、ストーカー以外の何がある?
もうこの電車には乗れない。
落ち込みかけたとき、手の中の本の感触に気がついた。意図せず強奪してしまった。返さなければ。たとえ、ストーカーと罵られようとも。
周囲を見回した。誰も俺を見ていない。ホッと息をつき、カバーのかかった文庫本をこそこそと鞄に片付けた。
明日、泥棒とストーカーの汚名を返上しよう。
壁に寄りかかり、外を見た。朝日がまぶしい。顔をしかめた。つもりだった。電車の窓ガラスに自分の顔が映る。
俺の顔は、晴れやかだった。清々しい表情で、嬉しそうに、笑っていた。
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