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倉知編 「恋愛感情」
授業が始まるまで時間がある。
席に着くと、携帯電話の番号をスマホのアドレス帳に登録した。十一桁の数字を何度も見返し、間違っていないか確認した。
あの人の番号が、俺のスマホに入っている。
休み時間のたびにスマホを見る俺を、クラスメイトたちは不思議そうにしていた。俺は普段学校にいる間、スマホをいじらない。サイレント設定にし、メールがこようと電話がこようと基本、操作しない。
そんな俺が、スマホの画面に執着している様は、異様に映っただろう。
「なんなの?」
昼休み、ついに友人の丸井がツッコミを入れた。
「お前がスマホばっか触ってるの、なんかむずむずすんな。ゲーム? メール? 何に目覚めた?」
パンを頬張りながら、丸井が画面を覗く。
「何、電話すんの?」
「いや、迷ってる」
今の時間、かけても迷惑じゃないか自信がない。十二時過ぎではあるが、彼の職場の休憩時間が今とは限らない。
「何それ。え、女?」
「男だよ」
「ならよかった。風香ちゃん、泣かすなよ」
丸井が俺の背後をちらっと見た。風香は三人の女子と机を合わせて弁当を食べている。
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