ボクとさくらちゃん

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 ボクには最近、お気に入りのヒトがいる。  コンビニで働いている女の子。  名前はさくらちゃん。たぶん。他の店員がそう呼んでいた。店員は胸元に名札を付けているのだけれど、ボクにはヒトの字はまだ読めない。  さくらちゃんは高校生で、長い髪をひとつにまとめている。その毛先がゆらゆらしているのを見るのが好きだ。  背筋が伸びてて姿勢がよくて、いつも笑っている。  仕事が終わると、ボクと遊んでくれ……いやいや、ボクがさくらちゃんと遊んでやっているのだ。フフン。  さくらちゃんはボクをなでながら、ぽつぽつと話をする。  こうやってボクに悩みや愚痴を言うヒトはたまにいる。ヒトにはボクの言葉はわからないので、ボクはただ聞いてあげるだけ。  さくらちゃんには夢がある。  女優さんというのになりたいらしい。  春になったら、トーキョーへ行って女優さんの勉強をするのだそうだ。コンビニでバイトしているのも、トーキョーへ行くためのお金を貯めるためらしい。  夢を語るさくらちゃんの目は、キラキラとしていて、でもどこか不安そうだった。  それにしてもトーキョーってどこだろう。遠いのかしら。
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