コンビニガール!

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 駅に近ければ近いほどコンビニというものは嬉しい。とくに乗車する最寄駅にあることは私にとって重要項目である。降車駅は会社の知り合いが多過ぎるのだ。そこで昼食を買うと、やれ上司やら同僚やら微妙な関係のただ顔見知りだけな社員と遭遇してしまう。持っているおにぎりやカップ麺を見られるのは何だかすごく恥ずかしいのだ。まぁ大抵向こうも同じように昼食を買っていることが多いのだから、堂々としていればいいのだけれど。  というか、もう三十五ともなるくせに何が今さら照れだというのか。私の買い物なんて街中のティッシュ配りのように誰も気にとめられない存在なのに。フゥと小さく息を吐くと、私の前に立つサラリーマンがイライラしたように小さく呟いた。 「ちっ、店員少なすぎかよ」  私よりも若い、まだリフレッシュさの残るサラリーマンだった。  薄いストライプの紺色スーツをビシッと着こなしているのに、その手に持っているのは焼肉御膳弁当とペットボトルの緑茶だ。ツーブロックヘアをバッチリ決めたその男性ならばクラブサンドイッチとコーヒーなんて買っていそうなのに。まぁそんな私も焼き豚定食弁当(小)と紙パックジュースだけど。人のことは言えまい。  第一店員さんが悪いのではないのだ。今会計されているあのおばちゃんが悪いのだ。なんだあの買い物カゴいっぱいのお菓子と飲み物と雑貨は。スーパーで買えばいいのに……とは思ったけど、今のこの時間はまだ開いていないか。それならば仕方ない。  そのおばさんと私の間にはサラリーマン含めまだ五人立っている。道のりは長そうだった。     
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