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 光に照らされきらめく細やかな黒髪も、驚いたようにおおきく丸められた切れ長の双眸も、男くささを感じる野性味ある顎のラインも、かっちり着こなされた制服も、その上に羽織られた白衣も、私のものより数センチは大きいであろう汚れた上履きも。彼を構成するさまざまな要素たちは、どれもこれもとんでもなく格好良い。彼のなかに素晴らしくないものなんて存在しないのではないか。彼の細胞はひとつひとつが発光しているに違いない。あまりにまばゆくきらめくので、周囲の空気中にもオーラが見える気がする。  誰に理解されずとも、私はそう思っている。  そうでなければ、彼のことをひと目見た瞬間から鳴り止むことのない鼓動に説明がつかないのだ。 「…だから、それは惚れ薬の効果だと言っておるだろう」  彼の姿を眺めてうっとりトリップしていると、突然冷めた声がした。  いとしい彼の声ではない。第三者のものだ。  彼との大切なツーショットタイムを邪魔された気持ちでムッと振り向くと、そこには見覚えのある――というか知り合いの少女が心底呆れた表情で仁王立ちしていた。
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