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「寝過ごしたの」 「……え?」 「食堂車で晩御飯を食べるつもりだったんだけど、この列車に乗ってすぐに眠り込んでしまって。流石に、もう営業してないわよね」 「オレのチケットには食堂車での食事がついていないからわからないけれど…… もう真夜中だから」  記憶を探る。確か、街の市場で買い求めた林檎がいくつか、バックパックに入っているはず。  ガラスに高い鼻梁を近付けて窓外の暗闇に目を凝らしている彼女にその旨を伝えると、強い喜色と戸惑いが瞳をよぎった。  煙草の火を消すと、遠慮の言葉を伝える彼女に少し待つ様に告げて、さっきの賑やかな個室へ戻る。愛用のバックパックを掴んだ。  オレに気付いた老人が何か言った気がしたが、よく聞き取れない。彼に手を振って、廊下に戻る。  腕時計に視線を落とすと、既に深夜三時を指していた。
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