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その子の周りだけ空気が違って見えた。
凛とした清楚な雰囲気・・とでもいうのだろうか俺の周りにはいないタイプの子だった。
髪を染めたり巻いたりしてる女が多い中、真っ直ぐで長い艶やかな黒髪を高い位置で結んでて・・・何よりも意思の強そうな真っ黒な目が・・・綺麗な子だっ――
「ちょっと、なに見てんの?」
綾香も彼女の視線に気付いたようだった。
「人のこと見すぎよ・・失礼な人ね!」
今まで俺に甘えるようにじゃれついてたヤツと同じ人物とは思えないくらい恐ろしい形相で彼女を睨み付けてた・・・早くも本性丸出しかよ。
「ごめんなさい!あんまり・・・綺麗で・・つい、見惚れてしまって」
・・謝り方も潔良かった。
「あら、そうだったの?もう~私に見惚れてくれるのは嬉しいけど・・・次からは気を付けてね」
綾香は恐ろしい形相から一転して元のぶりっ子モ―ドに戻ってた・・・余りの変わり身の早さに感心してしまって・・ドン引きだった。
イヤ・・でも、あの子が見てたのは俺の方じゃなかったか?
「クスッ、綾香は可愛いから女子にも人気あるんだね」
俺は彼女の反応を確かめるように・・わざとらしく綾香に言った。
彼女を見ると・・困惑したような目で俺をみてた――
「もう、そんな~やだ、瑠生くんまで・・・恥ずかしい・・」
綾香の白々しい小芝居を俺は自分でも驚く程・・冷やかな目で見てた。
綾香は俺の言葉に満足したのか彼女から視線を俺に戻すとすと・・また、つまらない話を楽しそうに話し始めた。
何故か彼女のことが気になって・・俺はわざと彼女に微笑んだ。
彼女は一瞬、驚いた顔をして・・慌てて俺から視線を逸らした。
その後、携帯を弄り出した彼女が二度と俺を見ることはなかった。
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