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「え?・・三組の黒髪の女の子?」
「そうだ、綾香と同じクラスの――」
「ああ・・・長い髪の綺麗な子でしよう?」
「うん、多分・・・ソイツだ」
俺は放課後、帰り支度をしてる隣の席の歩斗(あゆと)にさっきの女子生徒の事を聞いた。
歩斗は人懐こい性格でいろんなクラスや他校に友人が多い。
学校の内外に関わらず大抵の噂は把握してて・・かなりの情報通だった。
・・綾香の噂も歩斗からの情報だ。
「四条姫花・・その子、うちの学校の男子だけじゃなくて他校の男子の間でも密かに人気あるんだよ。・・残念ながら友達が一人もいなくて情報が無いんだよね」
・・友達が一人も・・・いない?
「それに、なんかお嬢様・・高嶺の花って感じで、みんな声かけられないんだよね」
お嬢様・・高嶺の花か・・確かにそんな感じだった。
「・・で?その子がどうかしたの?」
「あ、イヤ・・ちょっ――」
「ダメだよ!彼女には手を出さないで!」
歩斗は睨むように俺に言った。
「姫花ちゃんは僕たちモテない男達の憧れなんだよ!琉生の周りのバカ女共とは違うんだよ!・・琉生にだけは汚されたく無いね」
うっ・・・歩斗の余りにも真剣な顔に言葉が無かった。
「バ、バカ・・・そんなんじゃねぇよ」
「ほんとだよね?」
俺が頷くと歩斗はあからさまに安心したような顔をした――!
♪♪♪~♪♪~
綾香からのラインだった。
[靴箱のところにいるね]
綾香と一緒に帰る約束をしてたが・・気が乗らない。
なぜか綾香の顔を見る気になれなかった。
[急用ができた・・・ごめん]
・・俺は・・嘘を吐いた。
その後、何件も綾香から送られてきたラインを全部無視した。
放課後、学校を出ると何時ものように校門の前に何人かの他校の女子生徒たちがいた。
今日は俺の隣に誰もいないことがわかると、わらわらと俺の周に寄ってきた。
「・・これ、受け取ってください」
携帯番号が添えられたプレゼントが差し出された。
「これから、一緒にどこか行きませんか?」
女子生徒たちが誘ってきた。
「ごめんね、俺、用事あるから」
後ろでガッカリしたような響動めきが聞こえた。
生憎、女子生徒たちを気遣うような気持ちを持ち併せて無い俺は素っ気ない態度でその場を後にした。
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