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少しだけ日が短くなってきた夏の終わりの夕暮れ夕方と呼ぶにはまだ少し明るい時間帯、琉生くんはあたしを家まで送ってくれた。
何時ものように手を繋いで。
つい・・2、3ヶ月前までは17才にして友達の一人もいなくて・・・彼氏どころか好きな人が出来ることさえ疑問の日々を送っていた・・あたしだったのに・・歩斗くんから始まって菜緒くんや東崎くん・・・そして琉生くんに出会ってあたしの周りは目まぐるしく変わった。
大好きな人と手を繋いで歩くなんて想像も出来なかった。
私の手を引いて前を歩く琉生くんの後ろ姿が嘘のようだ。
「・・ん?・・姫花、どうした?・・なに?俺に見惚れてた?」
「・・うっ」
し、しまったつい、ガン見してしまってた・・・あ、あながち間違いでは無い――
「クスッ、冗談だよ・・なに?なんか俺に言いたいことでもあった?」
夕陽に照らされた琉生くんの顔は余りにも綺麗で・・見惚れずにはいられなかった。
「・・うん・・やっぱり・・琉生くんに見惚れてた」
「はぁ?・・お前、まだ、半分、気、失ったままなんじゃねぇの?大丈夫か?」
琉生くんは本気で心配気にあたしの顔を覗き込んだ・・・琉生くんの綺麗な顔が直ぐ近くに迫るとまたドキドキ心臓が煩くなった。
「・・だ、大丈夫だよ」
「やっぱ、姫花には、まだ・・刺激が強すぎんのかな――」
「そ、そんなこと無い!・・琉生くんとちゃんと付き合えるように・・・頑張るから」
「はぁ?なに、頑張るんだよ?」
「・・あ・・キスとかいろいろ――」
「プッ・・バカ、そんなこと頑張ん無くていいよ」
え?・・なんで?・・頑張ら無くていいなんて言われたら・・・複雑だ――
「あんなの頑張ってするもんじゃないし・・自然体でいいんだよ」
琉生くんは優しい笑顔で言った。
「でも、姫花が望むんなら濃密な個人授業してやってもいいけど」
「・・け、結構です」
「プハッ、ほんと姫花、面白い、アハハハ」
琉生くんは声を上げて笑った。
琉生くんとの関係を・・進みたいけど進めない・・・自分で自分がわからない・・恋愛ってほんと複雑な事だらけだ。
それでも・・琉生くんの傍にいると・・甘く・・胸が疼いて・・ドキドキが止まらない。
もう・・絶対に・・この恋は手放せない・・胸の奥で強くそう思った。
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