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ない!・・あたしの本がない!
あたしのバイブル、あたしの・・・あたしの夢のBL小説がない!
なんで・・?どこで無くしての?
たった今、あの喫茶店から、あたしはそのまま猛ダッシュで家まで駆けてきた。
家の門を潜るなり・・・爺の声がした。
「姫様、おかえりなさいませ、お買い物は無事お済みになりましたか?」
「ああ、無事に・・うっ」
爺に書店の袋を見せようとしたが・・無かった。
「姫様?・・どうかなさいましたか?顔色が悪いようですが?」
「あ・・イヤ、全速力で駅前から走ってかきたから少し疲れたようだ・・暫く部屋で休む」
「全速力で・・ですか?それはまた・・・姫様!姫様、何か部屋に飲み物でもお持ち――」
「イヤ、いい、構うな・・・暫く一人になりたい」
爺への対応もそこそこに急いで部屋に籠った。
鞄の中の物も全てひっくり返して何度も見てみた・・・やっぱりどこにもない!
・・どうする・・・あたし。
ショックだ・・四駅も離れた場所にある書店迄わざわざ行ったのに・・ドキドキしながらやっと買えたのに。
お陰であんなバカ男と会うはめになって――あ!
ま、まさか・・あの・・喫茶店に忘れた?・・ウソ~!
もし・・バカ――あ、いや、琉生くんに拾われて中を見られたら・・あたしはその先のことは恐ろしくて想像したくなかった。
爺が晩ご飯の準備ができたと呼びにきたが其れ処ではなかった。
最悪だ・・・色んなことを想定して・・・あたしは一睡も出来ずに夜を明かすことになってしまった。
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