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ああ・・気が重い。 昨日のことがショック過ぎて寝不足で眩暈がする・・もう学校なんてどうでも―― 「・・姫様、着きましたよ・・大丈夫ですか?」 気が付くとあたしを乗せた車はいつもの場所に着いていた。 「大丈夫だ、心配いらない、行ってくる」 あたしは、爺の言葉を遮って素早く車から降りた。 こんなことがお祖父様の耳に入れば面倒だ・・爺に何かを言われる前にそそくさと学校へ向かって歩き出した。 学校の門まで歩いて2~3分の距離がひどく遠く感じられた。 本を無くしたこともショックだが、もし琉生くんに拾われてたら・・そっちの方がもっとショックだ。 本を落とした所があの喫茶店ではありませんように・・拾い主が琉生くんでありませんように。 あたしは昨日から一睡もしないで思い付く限りの神さまに必死でお願いした。 もう・・・神さまを信じるしかない。 寝不足でふらふらする足取りでなんとか靴箱までたどり着いた。 ん?・・・なに・・これ? 靴を履き替えようと靴箱を開けると上履きの上に二つ折りされた小さなメモ用紙が乗っていた。 あたしは、もう一度くつ箱の名前を見た・・・うん、あたしの靴箱で間違いない。 誰が入れたか分からないメモ用紙を恐る恐る開けてみた・・・うっ! ――落とし物を預かってる昨日の喫茶店まで取りにこい―― ガ―ン・・そんな効果音が頭の中で盛大に鳴り響いた気がした・・・最悪だ。 昨夜、いろいろ想定した中で一番最悪な結果になってしまった。 残念ながら神さまにあたしの願いは届かなかったようだ。 ショックでその場にへたりこんでしまった。 昨日・・あのBL小説を手に入れた時の喜びが遠い昔のこと―― 「大丈夫?・・気分・・悪いの?」 頭の上から声がした・・顔を上げると眼鏡をかけた可愛らしい男子生徒があたしを見てた。 「・・あ、大丈夫です」 あたしは慌てて返事した。 「顔色、真っ青だよ。・・保険室、行った方が良くない?」 男子生徒は然り気無くあたしの手を引いて立ち上がらせてくれた。 「保健室は・・いいみたい。・・ありがとう」 あたしはお礼を言いながら彼に引かれた手を素早く引っ込めた。 「クスッ、僕は2年7組の椎名歩斗。警戒するような相手じゃないよ」 その・・男子生徒、椎名くんは人懐こそうな笑顔であたしに・・・そう言った。
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