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ぴん。
彼の指が、私の頬を軽く弾いた。
「ふふ…美咲。ずっと一緒だな」
柔らかな微笑みが私を見下ろしているのを、チラッと薄目で確認する。
くくっ、確かに『だらしない』や。
実は私、少し前からバッチリ覚醒しているのだ。
将馬さんのあの一言。
あれはやっぱり確信犯だったに違いない。
将馬さんと後藤田さんには、どこか似ているところがある。
どうやら、そのおかげで私には、一風変わった、でもたまらなく素敵な結婚生活が続きそう。
私はもう、寂しいとは思わない。
彼と、彼の周りにいる人達。
何を考えているか解らない、海千山千、深謀遠慮に長けた秘書。
シャイで真面目で最高に強いナイトさん。
知らないうちに、ピッタリの衣装を用意してくれているスタイリストさんとも、いずれは仲良くなってみたい。
そして、なんだかんだで私のことを考えてくれる、藤城の家族達。
自分がたくさんの優しさに包まれていたことに気が付いたから____
ああ、いけない。
嬉しくなったら、また眠たくなってきた。
タカトラさんの声が、再び耳に囁いてくる。
何を言ってるかは解らないが、声色はとても優しくて、時折笑い声が混じる。
すり…
彼の肩に頬を寄せると、温かな掌がそっと肩に落ちてきた。
贅沢過ぎる幸福に包まれて。
私は再び、微睡みの中に落ちていった。
(おわり)
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