3 夫の妙案

3/7
1015人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
 はあっ。  彼は盛大にため息を吐いてから、面倒臭そうに話し出した。 「前にも一度話しはしたはずだが」  前置きの後、 「今回はな、旅程が随分と長いんだ。ざっと見て10日余り」 「はあ…」  それは確かに聞いている。  直接的にではないにしろ、出掛ける数日前になると、言葉や態度の端々で散々不満を漏らしていたから。  この人には、ちょっと駄々っ子みたいなところがある。  クスッと思い出し笑いをしていると、至極真面目くさった顔をしていた彼が、急にプイッと顔を背けた。   「……だからだ」 「エエエエッ!そ、それだけ?」  コクンと頷く。 「ちょっと待って下さいよ、それじゃあ全然繋がらない…」 「…………」  彼はぎゅっと口を引き結び、ムッスリと口をつぐんでいる。 「あ の ね え!」  思わず立ち上がった私は、机にたんっと両手をついて、彼に詰め寄った。  間近に顔を覗きこむも、彼は横を向いたまま、頑なに瞳を閉じている。  膠着状態が続いていた時、  「コホン」  横から、少しわざとらしい咳払いが聞こえた。 「貴彪様、  奥様はお困りのご様子です。私の方から、少し補足説明をさせて頂いてもよろしいですか?」
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!