3 夫の妙案

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 かつては先代総帥の右腕、今は彼の頭脳(ブレイン)、やり手秘書の後藤田さんだ。  犬も食わないやり取りの中、顔色ひとつ変えずに彼控えていたその人は、主(あるじ)が “うん” と頷くのを確認してからクルリと私の方を向いた。 「奥様、心してお聞きください」 「は、はいっ」  静かながらも、その年を重ねた威圧感に思わずピシッ背筋を伸ばすと、彼は流暢かつ丁寧に説明し始めた。   「貴彪様はここのところ、ずっと気に病んでおられました。  他でもない、奥様のことをでございます。  新婚ながら、大きな邸宅の管理や、たくさんの家族の世話をさせてばかりで、ろくに構ってやれないと」 「え」  思わずポッと頬を染めると、 「ふ、フンッ」  彼は首を可動域ギリギリまで後ろに回して顔を隠した。  後藤田さんの語り口調は、だんだんと熱を帯びてくる。 「新婚旅行はおろか、妻の誕生日さえも共に祝ったことがない」  そうだ、私の誕生日。  確かにその日もタカトラさんは、ドバイに向かって飛んでいたっけ。 「ああ、こんなことが続いたならば、いかに自分とて奥様に愛想を尽かされるかも知れない」  タカトラさん…  「そんなっ、まさか私が…」  アナタを嫌いになるなんて、あるわけがないです! 
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