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「と、こういうワケでございまして。
おや貴彪様、どうなさいました?
少々血色が良すぎるようですが…」
「後藤田ぁ…キサマ、後で覚えとけよ」
「それはそれは…胆に命じておきましょう。それよりも、よろしいのですか?奥様の方のご様子が…」
爆発寸前の低い声を、サラリと受け流した後藤田さんは、チラリと視線を足下に向けた。
「ん?
み、美咲っ!?」
彼が慌てて席を立ち、机を回りこんで駆けよってきた。
「あは、ハハハ…」
その時の私はといえば…
机と椅子の間にヘナヘナとへたり込み、絨毯の上にグニャっと熔け落ちてしまっていた。
フワフワと宙に浮くような足取りで、渡された鍵の部屋へと向かった私は、入るなりドサッとベッドに倒れ込む。
ここへ来るまでの憂いは、もうすっかり消えていて、
ニヤッ。
我慢しようにも、頬が勝手に緩んでしまう。
全くもう、彼ったら。
彼ったら____
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