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彼は、私の腕を引っ張ると、ベッドサイドに引き寄せた。
カーテン開け放った窓辺から射し込む朝日に眩しそうに眉をしかめると、険しい顔で私を睨む。
「ひっ…」
身に叩きこまれているお怒りの予兆に、反射的に身体が縮み上がる。
ところが彼はすぐに表情を和らげると、少し眠たげに甘い口調で囁いた。
「美咲が__キスしてくれたら起きるよ」
「んなっ…」
そう言うと、彼は再びベッドに寝転んだ。
蕩けるような笑顔で私を見上げた後、彼はスゥッと瞳を閉じてしまう。
口の端に余裕の笑み。
く、クヤシイ。
朝っぱらから、完全にからかわれてるようだ。
しかしこれ(彼を起こすこと)は、私に課せられた重大任務。どうしてもやらねば、厳しい彼の側近達に、何しに来たのかと睨まれてしまう。
「ぅ…わっかりました!」
ごくっと唾を飲み込むと、私は待ち受けている彼を見つめた。
ドッドッドッドッ…
たかがキス。
そんなの毎晩、昨晩だってしたはずなのに。
おかしなことに、私の心臓は勝手に早鐘を打ち始めてしまう。
や、やだ私ってば、何を意識しているの?
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