5 王妃(クィーン)と騎士(ナイト)

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 彼は、先日私を屋敷に拉致(むかえ)に来てくれた中の1人。私の記憶が確かであれば、あの時、グラサン軍団の先頭にいた男性だ。 「あの~、随分と無口なんですね」 「……余計なことは喋らないよう、後藤田様より仰せつかっておりますので」 「…左様で」  うー、気詰まりだ。  それでも最初の頃は、それなりに観光地巡りを楽しんでいたんだが…  3日もすると私は、いよいよ寂しくなってきた。    はあ…ナットウ…食べたい…  ドーベルマンちゃん達、元気かな。私が居ないと、皆困ってないかなあ(たいして何にもしてないけどネ)  夏の終わりのこの季節、こちらはもう秋が訪れ始めている。  相変わらず、ホテルの周りをウロつきながら、私は、どこへでも付いてくる彼には聞こえないよう小さくため息をついた。  貴彪さんは相も変わらず忙しくって、朝と夜、チラッと顔を見せるだけ。  彼のスケジュール表をチラッと見せて貰ったが、そりゃあもう朝から深夜までびっしりで、とても自由な時間など取れそうにない。  つまり、目下私の新婚旅行は、朝晩のごく短い時間だけ。  私がここに居る意味って、果たしてあるんだろうか…  ホームシックにでもかかってしまったのか。  そんな生活が4日も続き、私はすっかりネガティブになってしまっていた。
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