5 王妃(クィーン)と騎士(ナイト)

3/14
1015人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
「奥様。今日はいかがなされます」  ホテルで朝食を採った後、ボディーガードのナイトウさんが、いつものように予定を尋ねてきた。 「スミマセン。今日は…イイです。  部屋で少し、ゆっくりします」  朝食を半分ほど残し、フラりと立ち上がると、私はヨロケながら部屋へと向かった。  その少し後を、ナイトウさんが付いてくる。 「あの、本当に今日はイイですから。ナイトウさんも、たまにはユックリしてください」 「…!」  ドアの前で力なく笑った私に、彼は一瞬、戸惑うような動きを見せた。  私をどこかに案内しないと、後藤田さんに怒られちゃうのかもしれない。  でも、今の私にはそれを気遣ってあげられる余裕がない。  構わず部屋に入ろうとすると、意外にも大きな声が呼び止めた。 「あ……あの!」 「ホ?」  迷った末、彼は意を決したように顔を上げた。 「よ、良かったら!  今日は私のお薦めのスポットに、案内させて貰えませんかっ。ここからは少し遠いんですが…お、おお奥様も…か、必ず気に入りますから!」 「は、はあ…」  正直、気乗りはしない。  だけど、彼の妙な気迫に気圧されて、私は彼の提案に乗ることにした。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!