1014人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
ガウウ……ワンワンッ!
ドーベルマンの果敢な威嚇をものともせず、胸ポケットに手を忍ばせて近づいて来る彼ら。
ワンちゃん達の守護も虚しく、あっという間に私達は取り囲まれてしまった。
黒い男達が、私に向かって距離を詰めてくると、 私を中心にして、ドーベルマン、黒ずくめの男達と、ドーナツ状の輪が出来上がる。
3匹が私の身体に張り付くように身を固め、円の半径はジリジリと縮んでゆく。
キャワンッ、キャインッ!
ワンちゃん達の鳴き声は次第に情けなくなってゆく。
クゥン…
とうとう、尻尾を下げて服従の意を示したワンコに、先頭にいた、いかにも悪そうな男がニヤりと顔を歪ませた。
たくさんいるはずの家人達は、朝が遅いため、この騒ぎに気づきもしない。
私といえば情けなくも、恐怖で声も出せず、腰を抜かして地面にへたり込んでいる。
嗚呼、絶体絶命。
タカトラさん……
迷惑かけてゴメンなさい。
私はギュウッと目を閉じた。
と_____
「お迎えに上がりました、奥様」
「……へ?_____」
恐る恐る顔を上げと、私を取り囲んでいた男達は片膝を折って、一様に頭を下げている。
ワンちゃん達に至っては、端の男から骨形のオヤツを貰って、とうに尻尾を振っていた。
「どちら……様?」
最初のコメントを投稿しよう!