3 夫の妙案

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「あの~、これは一体どういうコトなのでしょうか?」  目の前でゆったりとしたチェアに腰掛けている貴彪さんは、後ろに立つ後藤田秘書を振り返った。 「後藤田。説明は」  後藤田秘書はクイッと眼鏡を持ち上げると、抑揚のない声で返事をした。 「はっ。  機内で済ませてある旨、報告は受けておりますが」 「なら、そういうことだ」  彼はもう一度私に向き直り、ひどく涼しい表情(かお)をして、軽く首を傾(かたむ)けた。  その後。  ばかデカイベンツで、着の身着のまま連れ出された私は、あれよというまに小型ジェットに放り込まれ、半日かけて彼の出張先、ドイツへと空輸された。  黒ずくめは、全て彼の部下だったのだ。  ここはさるホテルの一室。  こちらへの滞在期間中、彼が執務室として借りている所だ。  机を挟んで向かい合う彼に、私は断固抗議した。 「ええ、確かに聞きました、聞きましたとも!  だけどね。  私は、アナタの口から直接聞きたいんです。  何でこんなに急に、しかも一言の相談もなく。  ビックリするじゃないですか!  私はてっきり誘拐に遭ったものだとばかり…」
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