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俺がその癖を直す頃には、
季節は冬になっていた。
『おにいちゃん、お正月帰ってくる?』
「んー」
俺は、久々に妹の芽衣と話していた。
あと10日もたてば大晦日だ。
今年も、数日で終わるんだな。
「たぶん2、3日は帰ると思う。父さんたちの顔も見たいし」
『そっか。じゃあ駅まで迎えに行く?』
「悪いな。時間決めたら連絡するわ」
『うん』
「あ、芽衣」
『何?』
俺は、気になっていたことを、口に出そうとしていた。
あいつのことを。
「あのさ、そ・・・小野寺、くん、とは仲良くやってんのか?」
『奏くん?』
小野寺、奏。
3週間だけここにいた、男。
芽衣の彼氏で、
俺の大切な・・・
『それが最近、会えてないんだよねー』
「そ、そうなのか?」
『うん。教育学部の子に聴いたんだけど、教職ってそろそろ試験が近いんだって。
その勉強とかレポートとかやらなきゃいけないからって、全然会えなくて』
「追い込みの時期ってやつか」
『そうなの。だからクリスマスイブも会えないって言われちゃった。寂しいよね。しかもイブって―ー』
そこからしばらく、芽衣の愚痴が始まった。
奏と一緒にいる時間が少ないのが、よほど気に入らないらしい。
・・・そうか。
今週末はクリスマスイブか。
俺は男だし、この年になってクリスマスなんて楽しみにしていないからいいけど、
芽衣にとってクリスマスイブは大切なんだろうな。
あ・・・
正月、実家に帰ったついでに
なんとかして奏に会えないだろうか。
勉強で忙しいだろうから、
少しの時間だけでいい。
芽衣と会うついででいい。
元気な姿が見られればそれでいいから、
奏に・・・会いたい。
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