絡まる鍵 MEMORIAL EVE

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「はあ、はぁ・・・奏」 明かりは点いていたのに、 奏はどこにもいない。 酒が入っているせいだろうか。 頭がクラクラする。 俺は、その場に座り込んだ。 結局、奏はいなかった。 そういえば家に入るとき、鍵がかかってたもんな。 明かりはきっと、俺が消し忘れたんだろう。 勘違い、だったんだ。 そうだよな。クリスマスイブに芽衣と会えないくらい忙しいんだから、 俺の家に来られるわけないよな。 俺のところに来るくらいなら、芽衣のところに―― 「何やってるんですか?」 ・・・・・・え? 声が聞こえたような気がして、振り返る。 そこには・・・ 「お酒、飲んでるんですか?顔真っ赤ですけど」 「・・・そ、そ・・・う?」 「クリスマスイブとはいえ、あまり羽目を外しすぎるのも――っ!」 わずかな余力を振り絞って立ち上がる。 そして、目の前の奏を おもいきり・・・抱きしめた。 「・・・奏」 「ちょ、ちょっと加減してください!お、お酒臭いですから」 「奏、奏・・・」 「だ、だから少し離れてくださいって。ふ、袋が・・・」 ――会いたかった。 ――元気そうで、よかった。 言いたいことはたくさんあるはずなのに、 それよりも奏のことを呼んでいたい。 奏を抱いて、 奏の名前を呼ぶと、 ・・・満たされていく。 「奏・・・奏、そう・・・」 「あ・・・・・・」 袋が床に落ちる音がして、 背中に奏の腕が、手がまわされる。 「ひ・・・・・・紘史、さん」 奏に名前を呼ばれて、 胸が、トクンと高鳴った。
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