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その後、飯を食いながらいろいろな話をした。
お互いの、半年間のことを。
「あ、ところでお前、着替え持ってきてるか?」
「いえ」
「・・・風呂上がったら何着るんだよ。じゃあ俺の、やるから着てろ」
「あ・・・・・・」
「ん?なんだよ。俺のシャツ、嫌か?」
「い、いえ・・・」
少し、考え込むような顔をしている奏。
なにかまずいことを言ったか。
「ほら、ほぼ新品のシャツ用意しとくから、風呂入って来い」
「・・・・・・あ、あなたは」
「え?」
「あなたは、お風呂に入らないのですか?」
「俺?俺ちょっとコンビニに行きたいんだよな。戻ってきてから入るよ」
「・・・そうですか」
奏の声のトーンが、少し下がったのがわかった。
そして、奏が俺を睨む。
「食事の前に、一緒に風呂に、と言っていたのは嘘なんですね」
怒り口調だった。
原因はわかっているのに、おもわず反論してしまう。
「そんなこと言ってない。一緒に飯食って、とは言ったけど風呂とは言ってない」
「百歩譲ってそうだったとしましょう。でも・・・」
「でも?」
「半年前、別れ際に言ったこと・・・・・・忘れてしまったんですね」
悔しそうに、奏はつぶやく。
そして、脱衣所へと歩いていった。
半年前に、言ったこと。
奏の手を握りながら、言ったこと。
「・・・・・・忘れるわけ、ないだろ」
とりあえず財布を手にして、
コンビニへと向かった。
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