6人が本棚に入れています
本棚に追加
第3章
玄関の扉を開けると、ふんわりと優しい肉じゃがの匂いが鼻をついた。
和食ということは、千鶴は今日からダイエット週間にするのだろう。
「ただいま」
開けっ放しになっていたキッチンの扉をひょっこりと覗き込み、中でコトコトとじゃがいもたちを煮込んでいる千鶴に声をかけた。
「あら美里ちゃん、おかえりなさい。遅かったから心配してたのよ」
「ごめん、香奈の委員会終わるの待ってたら遅くなっちゃった」
そう言いながら、私は千鶴の真横に置いてあったいももちを指でつまみ、ぱくりと口に入れた。
もちもちとした触感と口の中に広がるみたらしの甘さが、今日の疲れをほぐしてくれる。
「あ、それ明日のお弁当の分なのに」
「だってお腹空いてたんだもん」
結局今日は遅すぎるということで、クレープは食べずに解散となってしまったのだった。
「それに、今食べた1個分は千鶴さんの味身分でしょ? ダイエット、手伝ってあげる」
「あらそう、どうもありがとう」
千鶴はそう言っていーっと唇を大きく横に開き、歯をむき出しにしてきた。
私は声を上げて笑いながら、小学生みたいだと思う。
どうやらダイエット週間というのは当たっていたようだ。
最初のコメントを投稿しよう!