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彼女の規則正しく揺れる背中を見ながら、私は昨日岸とともに歩いていた時に起きたことを思い出していた。
激しい頭痛とともに、走馬灯のように脳裏をよぎった兄の姿。
それも、ただならぬ雰囲気で私に手を伸ばし、私の名前を呼んでいる姿。
私の記憶の中で、兄はいつも優しく微笑んでいた。
あんなにも険しい表情をした兄を見た覚えはなかった。
私はスタート地点である校門前を通り過ぎ、公道に出る方へと走りながら、あの兄の姿をどこで見たのか思い出そうとしていた。
しかし、より深く考えようとする度にこめかみの辺りがちりちりと痛み始め、思考を止められてしまうのだった。
とりあえず走り終わってからじっくりとまた考えようと、私は最後の半周を前を見据えて足を前へ前へと出して走った。
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