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第1章
バスの振動に揺れながら、私はスマートフォンの画面に指を走らせていた。
初めは真っ白だったページが、文字で埋め尽くされていく。
その文字一つ一つは黒い色をしているが、それらが組み合わされば様々な色を持つ言葉になる。
そうやってページを色鮮やかに染め上げていくことが、私は好きだった。
バスがゆっくりと停車し、私は前のめりになる。
プシュー、と気の抜けた音をたて、バスは新しい客を乗せようとその扉を開いた。
「やほ、美里」
私を呼ぶ声に、私は手を止めて顔を上げた。
「おはよ、香奈」
香奈は空いていた私の隣の席に腰を下ろし、私が手に持っているスマートフォンの画面を覗き込んだ。
「小説書いてたん?」
「うん、今新しいページアップするところ」
そう言いながら、私は画面右上に表示されている「保存」のボタンに指を乗せた。
画面中央でくるくると円が描かれ、少しした後「保存されました」というテキストがチェックマークとともに画面上に現れた。
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