鬼哭書房

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鬼哭書房

 シンザキって奴に殴られた。  G街はオカシイ奴がうろついている。  近くにはTSUTAYAがある。  偽書を売って何が悪いんだ!?こっちはそれで商売してるんだ。価値のない《KINGストーリー》ってゆー中身のない本を1万円で売っている。  本来なら100円くらいの価値しかない同人誌だ。  TSUTAYAが出来る前はそこそこ売れていた。  セブンイレブンが出来たらうちは商売あがったりだ!断固、阻止しないといけない!  スマホが鳴った。 《あっ、亘理くんかい?実はある仕事をしていてね?君に頼みがあるんだ、利用者の名簿を欲しいんだ、勿論謝礼はする。手伝ってくれないか?》  池畑、背は高いが眼鏡を掛けたひょろっとした男だ。 「断るって言ったら?」  俺はカレーパンの袋をクシャクシャに丸めた。 《君、15のときに万引きで補導されてるよね?》  ゾッとした。コイツ、何故俺の過去を?  池畑のゆーとーり、俺は鬼哭町ってところに棲んでいた。キコクチョウが正式名称だが、みんなオニナキマチって呼ぶ。 《君のせいでウチの本屋、潰れたんだよ?》 『鬼哭書房』の店主だったのか?確か、あの本屋の後にはコンビニが出来たはずだ。  確かGマートってコンビニだったな?  俺じゃなくてGマートの連中恨めよ? 『あれは江野の仕業だったんだ』 《ヒトのせいにしてんじゃぇよ?おまえのせいで潰れたんだよ、償えよ!》  俺の祖母は肺癌でG病院に入院している。  池畑は祖母の担当ヘルパーだ。  下手に逆らうと祖母があぶない。  江野は不良グループのヘッドでことあるごとに因縁をつけてきた。 『そのヘアスタイル似合わないからボウズにしろよ?』『スカートめくりしてこいよ!』 《君の過去を公にするってのはどうだ?そこそこ売れてるみたいじゃん?『公募ガイド』に載ってるよな?》 「利用者の名簿ってどこの?」 《あんたが運営しているサークルのだよ?おばあちゃんが悲しむ姿をみたくはないだろ?》    シンザキってのは池畑の仲間だったのか?  夜になった。店を出てジョギングをした。  スマホのニュースを見た。  元議員の矢萩ってジーさんの別荘が火事にあって、矢萩が焼死体で発見されたらしい。  バーさんが矢萩みたくなったらイヤだから名簿を池畑に渡した。
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