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秘伝の肉まんは略さないでください
江野は社長だから買わなくとも店を出れる。
白髪ボーボーの男が杖を突きながら店に入ってきた。「トイレを貸してくれんかね?」
「タダでは貸せません、どれでもお好きなものをお買い求めください」
ソルジャータイプの店員が丁寧な口調で言った。
「特に買うものもないのに買えってのかい?205歳のこのワシにムチを打つのかい?」
「ツベコベ言わずに買えよ!ドアのところに書いてあるでしょ?『トイレのみの利用はご遠慮ください』って」
「新撰組よりひでーや、あの鬼の土方でさえトイレくらい貸してくれたもんだ」
「文句があるんなら室町首相にゆーんだな?」
「漏れそうじゃ!ヒニクのことを教えてやろうとおもったんじゃがな?」
アリスと江野の動きがピタリと止まる。
バックヤードをあらかた探して出てきたところだ。アリスはスーパーの惣菜部門で働いていたことがあるが、コンビニとは違い調理をする。
米を磨いだり、天ぷらを揚げたり。
『デリシャス大江』って美味そうなのに吐きそうな名前の店だった。
《デリシャス、オエッ!》
「皮肉を教える?ジーさん、何わけの分からんことを言ってるんだ?」
店員があっけらかんとしてる。
「皮肉じゃなくて、秘肉じゃ!秘伝の肉まんじゃ!」
「…………この店ってそんないかがしいもの売ってたんですか!?」
「何を妄想しておるんじゃ?真面目に働かんか?」
江野が店員にジャブを喰らわせた!
「イテェ、何しやがるんだ………」
鼻血が指の間からダラッと溢れる。
「仙人に土下座しないか!?」
江野に往復ビンタを喰らい店員の顔がボコボコに腫れる。明日は腫れないといいなぁ?
店員は土下座して、さらに仙人の泥にまみれた靴を舌で舐めた。
「よい、味をしておいでです」
「仙人、ここでは何です場所を移しましょう」
江野、アリス、仙人の3人はバックヤードに入った。値札を貼る小型の機械がある。引き金みたいな突起を引く、パチンッ!江野はアリスの額に値札を貼りつけた。
「貴様の値打ちは130円」
エレベーターを使って地下に降りる。
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