仙人の正体

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仙人の正体

 Gマート東宿郷店の地下室はまるで水族館みたかった。マグロや熱帯魚、鮫などが泳いでいる。  江野は1997年の集団訴訟を思い出した。  社員たちに過酷な労働を強いているなんて、自分では微塵にも思っていなかった。ドーナツ化現象がコンビニ誕生の原点である。  コンビニの小売り形態はもともとはアメリカで開発された。  コンビニは《便利》って意味がある。  小売店に求めている立地条件は、《多くの店が1ヶ所に集中していること》と《その店までの距離が近いこと》にある。  江野はかつて鬼哭町に住んでいたが、あの街は店がアチコチに散らばっていた。コンビニやCD屋が出来てもすぐに潰れてしまう。  平成不況はコンビニ業界にも打撃を与えた。 「秘伝の肉まんの場所を教える変わりにある人間を始末してもらいたい」 『亘理満男』彼は私の大切な駒だった。Gマートの発展のためには、あの本屋が邪魔だった。  息子に頼み、亘理に鬼哭書房で万引をさせた。さらにゴキブリやネズミをバラまいたりした。  私はあの本屋で働いていたがクビを切られた。  復讐としての側面もあったのだ。  仙人はどことなくあの本屋の店長に似ていた。 「もしかして、池畑さんじゃないですか?」 「漸く気がついたか?俺は店を潰されて、首を吊った。しかし、蘇ってしまった」  池畑はアリスの額に中指を押し当てた。パシュッ!指弾が発射され、アリスは額から血をタラリと流して死んだ。 「地獄でさまざまな術を手に入れた。私に歯向かうものは容赦しない」  スーパーバイザーの里見がやって来た。  加盟店を巡回して店舗指導を行うのが仕事だ。  店舗運営に問題があればそれを取り除くための助言を行う。養成期間は1年から1年半だ。 「何かあったのか?」    私は里見に尋ねた。  里見は虹原アリスの死体を見て呆然としている。 「G病院にあるローソンがトイレの利用を無断で許可してるようです」  ローソンはGマートのライバルだ。 「法律を犯してるってことか?」 「店を指揮してるのは誰だ?」 「大野杏って若い女です」 「彼女はクビだ!イヤ、待て、利用価値があるかも知れない」
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