ネット裁判員

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 警察ってホントに人が死ぬまで仕事してくれないんだなあ……とか思いながら二ヶ月くらい経った頃、その警察から電話が来た。弟が隣県の県道上で倒れているところを保護され、地元の病院に入院しているという。もちろん、すぐ会いに行った。  幸い大きなケガもなく、数日検査入院するそうだ。ホッとしたのもつかの間、もっと深刻なことがわかった。弟は一切の記憶を無くしていたのだ――ドラマみたいな話だが。失踪したいきさつはもちろん、家族の顔もわからない。家族全員ショックを受けた。  僕は弟のバイト先の人間を疑っていた。僕も弟もいわゆる「陰キャ」だが、「陰キャ」には「陰キャ」ならではの鋭い勘ってもんがある。弟のことを聞きに行った時に面倒くさそうにあしらわれたばかりか、僕のこともどこか小馬鹿にしているような感じだった。その時、弟はバイト先でいじめられていたんだ、と直感した。それを苦にして自殺を図ったが死にきれず、そのショックで記憶を失ったんじゃないのか。  だがそれでも警察は動かない。本人も無事見つかったことだし事件性もないから、という理由でだ。理不尽過ぎる。  僕は、弟が何か証拠になるような書き込みでも残していないかと履歴を頼りにネットの海を漁った。そのうち、一つのサイトにたどり着いた。 「『最高民度が裁く大正義法廷』……?」
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