ネット裁判員

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 厨二病臭いサイト名といい黒系の背景に目隠しして天秤を持ったゴスロリ少女のイラストといい、ネタサイトじゃねえの、と思いながらついついのぞいて見た。 「これは世の中において法の網をくぐり野放しになっている『悪』を良心的なユーザーの、真っ当な正義感で裁くサイトです」  何だ、「バカッター晒し上げ」みたいなことをやりたい連中が騒ぐだけのサイトか、くだらない、と閉じようとして「あなたの怒りにもお答えします。詳しくは管理人まで」という一文が目に入った――警察が動いてくれないんなら、バイト先の店名晒して叩かせたっていいよな?僕は今までのいきさつについて管理人にメールを送った。すぐに返信がきた。 「承りました。当該案件は当方が厳選した最高民度裁判委員会の審理を元にAI裁判長が提出された証拠と類似案件のデーターを総合的に解析し刑を確定いたします。裁判そのものには費用はかかりません。ただし条件が」 「何ですか」  料金を請求されたらダッシュで逃げて消費者生活センターに通報しよう、と身構えながら聞き返す。回答は意外なものだった。 「ボランティアで裁判員を勤めてもらうことです。一件につき他の裁判員の方がランダムに12人関わります。そこであなたにも裁判員として12回、他の審理に参加していただきます」  理には叶ってる。でも、初対面――いや、ネットで問い合わせてきただけの人間に「最高民度の裁判員」を依頼するのか?やっぱりこのサイト、怪しい…… 「もちろん適性検査があるので受けていただきます。ですが、大丈夫だと思いますよ。あなたのように真っ当な怒りを抱えた人は高い良識と強い正義感を兼ね備えている場合が多いですから」  そういうことなら納得できる。 「アカウントを取得したら適性検査の方にお進みください。検査結果と審議の日時については追ってお知らせ致します」
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