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『振られた』
田中君から送られてきた突然のメール。
私はそれを見てどう返せばいいのか分からなくなった。
話だけだったけれど、田中君が彼女さんを好きだったのはよく分かるけど、私には好きな人に振られるなんてことは分からないから。
同情なんてしたくないしされたくないだろうし・・・。
気がついたら私は田中君に電話をかけていた。
『もしもし?』
数コールの後電話にでた田中君はとりあえずいつもと変わらない声だと思った。
「ん、あれ。本当?」
『うん。まぁ薄々感づいてはいたけど・・・ね』
「そっか・・・。つらい・・・ね」
どういうわけかその一言でずっと我慢していたのか、電話口から泣いてると思われる嗚咽が聞こえてきた。
「あ、ちょ・・・泣かないでよ」
『うん・・・ごめ・・・ごめん・・・』
「ん・・・私が何言っても慰めにならないだろうけど、まぁ一緒に飲んであげるからさ、泣くな?」
『うん・・・ありがと・・・』
その後3分くらい話して落ち着いたころに電話を切った。
(振られた・・・か・・・。かける言葉なんて、分からないよ)
―可愛そうとか、気持ちが分かるなんて言葉は薄っぺらい
田中君も言っていたし、私もそう思う。
可愛そうなんてセリフは、自分を棚上げにして相手を見下しているのと同意。
気持ちが分かるなんて、感じ方も考えも置かれている状況も違うのに分かるわけが無い。
所詮他人なのだから。
―家族でも、恋人でも、兄弟でも。他人は他人、”自分でない他のの人”
そんなことを言う田中君にこういうときにかけられる言葉なんて、私は持ち合わせていない。
できることなんて無いのかもしれないけど、この時、無性にそばに居たいって思ったのかもしれない。
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